セコンドなし。レモンが、妻が、顎尻おやじが見守る中、ハウル!全日本大会初出場はどうなるか?!
半世紀もね、生きていると色々なことがあることは良く理解している。でもこんなにハプニングがあるか〜??って感じ。
大会が進んでいく中、ハウルとレモンも必死に他の選手や、同時開催されていた
全日本学生フルコンタクト空手道選手権大会
に出ている選手を必死で観ていると、妻が何故か急に
「帰りの新幹線のチケットがない…。」
といつもより弱気な声で呟いた…。顎尻おやじも必死で試合を観ていたが、なんの根拠もないが、
「あるやろう、心配するな…。落ち着いて鞄探してみぃ」
と素っ気ないお言葉。しかし妻の弱気な声は変わらず…。
「やっぱり…。ない…。」
って言う。顎尻おやじが、妻のカバンの中を見ても、やはり
ない
のだ。そして顎尻おやじが妻に
「まだ時間が早いから、宿泊していたホテルに電話して忘れてないか?聞いてみよ?」
と言うと、不安な顔して(めったにないが、鬼も不安になるようだ…。)携帯をならす…。そして宿泊先のホテルに繋がる。訳を話すと対応よく部屋を探してくれると言う。まだ時間的に次のお客さんも入ってないだろうから、なんとかなるのでは??と心の中で思っていた。そして、妻に何の根拠もないが
「あるよ、心配せんでも、ある!!」(知らんけど…。)
そして妻の携帯にホテルからの折り返しの電話が…。ワンコールで出ると、
各部屋のゴミを集めたゴミ袋の底から出てきた
と連絡があった。妻の顔色がみるみるうちに血色が良くなる。(さっきまでの妻なら、顎尻おやじが喧嘩しても勝てたかも…。知らんけど…。)
「早く、タクシーでホテル行って、チケット取ってこい。それに弁当買ってきて…。」
と言うと、妻はレモンとともにホテルに向かった。
あったから良かったけど、なんや色々あるなぁ
と思ったのが正直なところ。
そして残った私とハウルは
正道会館の前河凛花選手
を観て陰ながら応援したりしていた。そして、ぼそっとハウルが
「ちょっと緊張してきたなぁ…」
といつものセリフを…。頭痛などがマシになったのか、体調が悪いことは言わなくなった…。体調の悪さより緊張が勝ったのか…。良く分からん状況。
そして、血色がすっかり戻った妻が、弁当をぶら下げてレモンと帰ってきた。なんやかんや言って、やはり妻が調子がいい方がエエ。(まあ、ちょっとぐらい弱くなっている方が可愛いんやがね…)ハウルも若干嬉しそう…。
そして早速、買ってきた弁当を食すも、あの大食いのハウルが弁当一つを3分の1残した…。勝ちたいからか…。体調悪くて食べれないのか…。心配なところではあるが、あえて触れず…。
そんなハウルを察してか、妻が
「チケットあった私は無敵や…。」
みたいな事を言い出した。(じゃあ、お前が戦え!!って心の中で呟いたが、呟くのが精一杯の顎尻おやじ。)
無敵な人が無敵になる!!
ってどう言う事だろう…。
スーパーサイヤ人
が
スーパーサイヤ人ゴット
になるみたいなもんやろうか????????
そんな冗談も耳に入らんぐらいのハウルの顔。相変わらず体調悪いのか?ORド緊張??なのかは最後まで分からず…。
そして試合前となり、アリーナで試合場の横まで行けるチケットを持った妻とハウルが試合場へ。まずは、防具などが違反してないかのチェックをしてもらい、合格。そして待機椅子へ座る二人だが、なにやらハウルは落ち着きがなさそう。どうやら対戦相手をどこかの試合で対戦はないも、見たことがあるようだ…。
レモンと私は互いにスマホをビデオモードにして上から見学。セコンド以外、声を出せないので静かに上から見学、録画。
後で知ったことだが下に降りた妻は服装が襟付きでない為、チケットがあるにも関わらず、着席させてもらえず。(セコンド、道着で入っている者もいるし、妻は襟付きの服なんか家中探しても私は持ってない、流行りの分からん審判や…!!!と怒っておりましたがね。ルールはルール、清く正しい空手会の発展のため、スーパーサイヤ人ゴットとなった妻は少し離れて録画。)残念無念。
セコンドに入る資格を取ってもいいのだが、ハウルはどれだけ、デカい声を上げて指示を送っても全く聞こえないタイプ。別の世界にお行きになるから、セコンドに入れるか入れないかは正直戦績に関係ない。いつも
我が道を行く
タイプであるので、セコンド資格を取っても意味がない。そんなことでセコンドには誰も入らずで試合開始。
審判の号令で礼を重ねる中、
構えた
ところ、レモンも私も上から見てても分かった
ヤバイ(心の中での二人の叫び、妻も思ったであろう…。)
腰が落ちてない、棒立ちくん
完全にハウルの負けパターンの時の構え!!
どれだけ心の中で三人が
腰を下ろせーーーーー
と叫んだであろうか…。
1分半の試合時間に注意2回も受けて挙句に得意な技も一発も出せず。
戦艦大和(ヤマト)沈没
ですわ。妻曰く、
「能力の2%も出せず、負けた…。」
と呟いていた。それ程いつになく、いや、いつも通りに
上がってしまった。
完全に会場に!雰囲気に!相手に!ひかれている赤のマットに!飲み込まれていた。
体調が悪いからと言い訳できないぐらいの無惨すぎる敗退。あれが良かった、これが悪かったと言い合えないぐらいの試合内容…。辛すぎる…。辛いのは本人だが、ここまで連れてきた親も辛い…。負けてもいい、負けてもいい。
せめて自分の戦いをしてほしい。それなら文句は…。
これ以上、家族も言葉が出ない。その中、レモンが一言、
「ハウル!!全く腰が落とせてなかった…。」
それが会場での家族の最後の心の叫びとなった。
そして旅は、ハプニングはつづく。事件がおきたのだ。
東京駅まで戻ってきて、お土産を買ったりするのに荷物が多すぎて身動きできないので、主だった荷物をコインロッカーに入れた。暗証番号付きのヤツ。そして、夕食やお土産を買って新幹線の時間まで15分か、20分前ぐらいにコインロッカーに戻った。
「さあ、帰るぞ!!」
気合いを入れて、お土産持ってさあ、帰ろうと思ったら
無敵のスーパーサイヤ人ゴット
になってた
妻が、妻の手が震えている。
二つのコインロッカー入れたのに、暗証番号を書いた紙が一つしかない。妻が青ざめた顔で、まさしく試合会場で見せた、あの
狼狽する妻
がそこにあった。
「ない、暗証番号を書いた、紙がない」
と震えながら言うのである。
そして、服に付いているポケットというポケットを手で探っていく…。まさしく
阪神、岡田監督のアレ
ではないが、監督がバントやスクイズ、ヒッティングのサインを出しているように手で体中触って暗証番号を書いた紙を探す。
「ない…」
スーパーサイヤ人ゴット
が
ただの哀れなオバはん
に変わった瞬間である。あれだけ、
無敵を誇っていた女
が
鉄の女と言われた、イギリスの首相、サッチャー
より強いとまで思われていたスーパーサイヤ人ゴットが
狼狽していた…。
「これでは、間に合わない。」
と
バントのサインをそこら中の観光客に出しながら、
妻が言い出した。そして顎尻おやじが必死にコインロッカーの管理会社の電話番号を発見し妻が架電。そして、妻が
「この新幹線のチケット(ホテルのゴミ袋から奇跡的に助かったチケットであるが)持って」
「そして、三人で新幹線で帰って!!!!!!!」
と言い出した。
素早い決断。
そうしかない。
そうするのが被害が少ない。
何故なら格安チケットでグリーン車を取ったので変更もできない。全てのチケットをオジャンにするなら、これが最善の策。
でも、でもである。さっきまで最強を自負していた妻の狼狽ぶりが、
ハウルとレモン
を呆れさせた。レモンが
「あれだけ、私、最強!!って言ってたのに…。」
そしてハウルが
「ここにきて、ママ置いてけぼり…。」
って呟く。あれこれ言っている間に、もう新幹線の時間も迫ってきている。電話でコインロッカーの管理会社も来てくれることになったが、時間がない。遂に顎尻おやじも決断。
「帰るぞ、三人で」
と言って新幹線のホームを探しながら三人、両手に大荷物を持ったまま東京駅を走った。
走った、三人とも
なんでやねん
って思ったと思う。半世紀以上生きてきても、そうそうない
ドジ
な話。そしてやっと乗り込むべき新幹線の前に並んで、さあ乗り込もうとした瞬間、
妻がデカいデカいハウルの試合用バックを抱えたまま登場
したのである。息絶え絶えになりながら
「ま、間に合った…。」
と妻が言うか言い終わるかぐらいの瞬間に四人で無事に新幹線に乗り込むことができた。まさしく、
間一髪
奇跡
である。なぜか四人で
大笑い
聞くと、妻が
「あれからスグに管理会社の方が来てくれ、出してくれた…。」
「ほんまに、有難う、有難うございますって感謝を述べて、全力で走ってきた」
と言うのである。(東京の皆様、妻が騒がしまして、申し訳ございません…)
なんか疲れる旅行、いや大会参加である。顎尻おやじが新幹線の中で
爆睡
したのは言うまでもない…。
我妻は疲れる女である。
それでは、また…。つづく…。
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