忍者の里杯からの連戦。あのライバルと戦うために強行出場。第五回ジャパンアスリートカップ近畿予選大会参戦
実はこの大会の前日、琵琶湖付近まで遠征し同じくジャパンアスリートカップの予選会である
忍者の里杯
に出場してきた。
レモンは骨折の為、欠場したが、彼は奇跡的に6年生の終わりに
JAC(ジャパンアスリートカップ)の権利
を取っているから、余裕で欠場なのだ…。
しかしハウルはJACの権利を持っていないので
忍者の里杯とジャパンアスリートカップ近畿予選大会
と連日になるが参戦となった。
結論から言うとハウルは忍者の里杯では
準優勝
であるものの権利は獲得できなかった。
そこで負傷もあり怪我を抱えているので、今年は受験も控えているし無理することなく近畿予選大会は欠場しようとなっていた…。
ただ正直なところJACの権利はどうでもいいのだが、この大会には
あの漢の名
がトーナメントの一角を牛耳っていた…。
それは
宮野道場、重量級、エース
綿飴(わたあめ)まさき君
の名前があるのである。
ハウルが一回戦を勝利し、かつ彼が一回戦を勝利すれば対戦できるのだ…。
彼は必ず勝ち上がってくるだろう…。
ハウルも怪我があるとは言え、国際親善大会や昨日の忍者の里杯の動きを見ても一流どころ以外は負ける気がしない…。それなら二人の対戦はほぼ決まりの様な感じもする…。
そして同大会には、
極真会館、中村道場、軽量級のエース
中田風人くん
も出場するのだ…。
互いに励まし合い権利を獲得するなんてのもええんやが…。
なんて思いながらも明日の試合、近畿予選大会は欠場を家族で決めていた…。
が
アマゾンプライム
で
世紀のボクシング大会
井上拓真と堤聖也
との対戦を顎尻おやじとずっと観戦していたハウル…。
執念で堤聖也が天才兄弟の弟、井上拓真に勝利した試合後、ハウル自身が
「明日の試合でるわ…」
と決断した。
子供の決断に、とやかく言う親ではないが子供であるハウルが出場を決めたのだから、後は親として力を貸すしかないと思った。
妻は試合会場で食べる4人分の弁当を作り、顎尻おやじも何とか負傷しているハウルが少しでも戦える様、知恵を練った。
なぜ出場を選んだのかは詳しくは聞いていないのだが、やはり
執念のボクシングで天才兄弟の一角を崩した
堤聖也
のボクシングスタイルに少なからず感銘を受けたことによるものと思われる。
そして早朝から試合会場に向かい50数試合後の第一試合を、首を長くして待ち侘びた。
そんな中、ハウルが開会式から帰ってくると一言、
「俺の対戦相手が見当たらんかった…」
と言うのだ。
ウチのハウルは以前からお話している様に、どんだけ強い相手でも
自分がどの選手と対戦するのか
事前に確認しておきたいタイプである。
一年前の国際親善大会参戦し外国人に当たるのが怖くて、対戦相手を探しまくって外国人のお尻付近に付けているゼッケンを確認するために体育館中歩き回ると言う事件があったぐらいだ…。(過去のブログ参照)
今回も…。とは思いはしたが仮にも昨日準優勝、国際親善大会では
進撃の巨人、ベッカム
を撃破してきているだけに、大丈夫だろう…とは思っていたのだが…。
それ程、ウチのハウルは甘くない。試合が始まり少し経つとアップもせずに体育館内を歩きまくる。背が大きい選手や体重が重たそうな選手を片っ端から確認する。
そして背伸びをしては
港の燈台が海を照らす様に
背を精一杯伸ばして、二階観覧席まで熱視線を送るのだ…。
しかし相手選手を見つけられないようだ…。
さり気無い雰囲気でいるも必死に探しているハウルがそこに立っているのだ。
親には分かるのだ…、その必死ぶりが…。
情けない…と思いながらもハウルに
「最近、マイコプラズマの肺炎などが流行っているので欠場の選手も多い様だ」
「お前の相手も欠場かもしれんよ」
「だから、そんな事に汗かいてる暇があったらアップをしっかりしたらどうだ…」
と言っても上の空。
顎尻おやじの言葉が完全に耳に入っては反対の耳から抜けていく…。
しかし子供がアホなら、親もアホ。
なぜかハウルと一緒に相手選手を探しちゃうのだ…。
なぜならハウルは見つけるまで探すだろうし、そんな事してたら精神衛生上悪い。
勝てる試合にも勝てない…。
だから親バカ、やっちゃうのだ…。(やっちゃえ、日産って感じなのだ…)
しかし、おらん…。
とうとう50数試合後にある初戦で待機場で待つまで探し倒した挙句…。相手選手が欠場であると待機場で選手を整列させている係員の持っているトーナメント表をこっそりと覗き見して分かったのだ…。
相手選手欠場…。
顎尻おやじは馬鹿笑いしてしまった…。
居ない相手に怯えて50数試合分の時間を燈台の様になって探し回るハウルの姿を改めて思い出し、吹いてしまった。
また普通なら喜ぶところだが、ハウルはどちらかと言うとスロースターターと言うか、一戦は戦っておきたいタイプ。ましてや初戦で
宮野道場、チャンプ‼️
綿飴(わたあめ)君
と戦うのは至難の技。
親の目線から話すと、せめて一回戦をハウルより少し弱い相手と試合させてもらって体を温めて緊張が完全に取れてから戦うのが
ベスト
であると思っていたのだが…。
そんな複雑な気持ちでいると
綿飴(わたあめ)君のお父さんがハウルのところに来て、
「不戦勝??ラッキーやな」
って感じでフランクに話しかけてくれている…。
嬉しい限りだがハウルの場合はそうとも言えず…。ただ本当に綿飴(わたあめ)君のご両親はよくお声かけ頂いているし、何故か顎尻おやじも喋りやすいのだ…。
一見して強面のお父さん、
人の良さが際立つお母さん、
お二人ともハウルは勿論のこと顎尻おやじだけでなく、妻やレモンにも気さくに話しかけてくれるのだ。(ほんまにいつも、ありがとう‼️)
この時も、綿飴君のお父さんはレモンに近づき、
「どうや、兄貴調子ええか??」
と聞いてきてくれたらしく、レモンは即答で
「ええ絶好調です‼️」
と答えたらしいが即答するレモンもレモンなら、戦の前に相手選手の弟に選手の調子を聞いてくる綿飴君のお父さんも面白い‼️
試合前に家族でその話で大笑いしてしまった…。
そして待ちに待った試合へ。
試合は静かに進んだ…。
綿飴君は一回戦を何の不安もなく勝ち上がり動きも良さそうだ…。
ハウルのセコンドには、顎尻おやじ、妻、レモンの3人が入る…。
綿飴君のセコンドには、お父さんに宮野道場の先輩選手。
サースポー(右前に)構えるハウルの動きに警戒しているのか、間合いを直ぐには詰めてこない。
その間合いでハウルが戦えるか…と思っていた時に、ハウルが左構えに戻した途端、互いの上段蹴りの応酬から始まり、綿飴君が怒涛の勢いで攻めてくる…。
的確な突きと下段。
これは相変わらずだ…。
ハウルもそれに応戦する…。
前半は親の欲目か
互角の展開
に見える。
ハウルの出す胸パンが綿飴君の突進を止めている。
互いに反則などしない様に丁寧に戦っている様に見える…。
互いの性格がそうさせている様に見える。
綿飴くんとの対戦は4回目。
そのほとんどに反則というものがない。他の試合を見ていても注意される事が少ない選手であると思う。
それだけ
攻撃の正確性
もあるのだが、
彼の真面目な性格が影響
していると顎尻おやじは思っている。
それゆえ負けてばかりのハウルも
綿飴くんと戦うと、
ほんま空手って面白い
殴り合い最高‼️
って思うらしいのだ…。
試合は中盤から終盤に入って行く。
そんな展開の中、二人の間に少し距離が空いた瞬間があった。
そのほんの少しの瞬間、顎尻おやじは
今や、行け‼️
と心で絶叫するも(なぜ、心の中なの?って思う方も多いかと思いますが、何故なら試合中は声に出して言ってもハウルには届かないから…)
攻撃に迷いが出るハウル…。
何を出して良いか分からなくなっている…。
美味しい物が食卓に並んでいるのを上から見て、迷い箸
してる感じ。(表現は完全に間違っているが…。)
ただその瞬間を逃す我が子が歯痒くて仕方がない…。
綿飴君もハウルの攻撃を待っているのに…。
待っている綿飴君にカウンターを取られるのを畏怖しているのか…。
そこまでハウルの実力では読めない。
勝てる瞬間
はそう長くはないのだ…。
そして、迷った挙句に出した攻撃の狙いは良いのだが…、確実性がなく綿飴君を効かすほどの効力がない…。
そしてその勝利を自力で取りにいける時間を逃してしまったハウルは、そこから、ジリジリと下がらされるのである…。
一度チャンスを逃すと強い相手に二度目のチャンスは訪れない…。
そして、その好機を強者である綿飴君が逃すわけはない。
完全な勝ちパターンで押してくる。
ハウルも以前よりは上手く抗戦しているが、技術に一日の長があるのが綿飴君だ。
しかし、しかしだ。
それでも諦めてない漢がセコンドに居た。
レモンが必死に兄貴を応援しているのだ…。
それこそ体育館中に響きわたるぐらいの声で檄を飛ばす
「ラスト30秒‼️」
の掛け声から必死に声を振り絞る。
「ラスト、押せ、出せ‼️」
「出し切れ‼️」
「ラスト、ラスト」
「出し切れ、出し切れ‼️」
と喉を潰すが如く、がなっていた。
兄を思う気持ちが顎尻おやじにも伝わるほどの声援だった…。
そしてタイムアップ。
旗は当然、
綿飴くん
に全て上がった。
コートから降りてくる二人。
自然と互いの親同士も集まる。
ハウルと綿飴くんが頭を下げて互いの健闘を称えあう…。
綿飴くんのお父さんが、
「確実に差は縮まっている」
「大きな選手と戦えるのが息子にとっていい目標、モチベーションになる」(あのお父さんはモチベーションとは言わないか、キャラ的に…すいません、こんな表現して。)
「いつまでも良いライバルで居てや‼️」
と声をかけてくれる。
厳つい風貌から出てくるとは思えない
優しい言葉の数々だ…。
ウチはその言葉に頷くだけ…。
そして側には綿飴君のお母さんも、
うん、うん
と頷く様に我々の話を聞き、またその瞳には私の見間違いでなければ目頭を熱くされ涙ぐんでいた…。
本当にいい試合だった…。
そう表現するのは、もう何度目だろう…。
そして後何度、彼とハウルが試合ができるのだろう…。
この試合の映像を見たある方が言った…。
勝ちたい時に必死に努力しないとフルコンタクト空手は、勝ち逃げするかの様に強い選手でも辞めたりキックボクシングに行ったりする。
勝てる時にリベンジしないと…。
その言葉がハウルに届いたかどうか…。
そして届いていたとしても、それが行動となり、継続できるのか…。
ハウルに関しては、中学という期間がもう残り少ない…。試合もあと数試合だ。ここで勝てないと高校に上がって勝てる保証は全くない。何故なら現在高校生で残っているのは、確実に大きな大会で優勝している経験があるものだけが一線で活躍しているのだ。そこに勝てないハウルが上がって行くのは至難の技となる。一度、優勝という経験をしているものと、経験してない者の違いは雲泥の差があるのだ…。果たして彼は今後も空手を続けて試合に出続けるのか…。だからこそ、今を大切に本当に必死になって努力してほしいと思う。
ええ試合だった…。
もう、この表現だけは記したくないものである…。
それでは、また…。つづく。
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